[ベネズエラ]カナイマ

<カナイマ湖での水浴び撮影ポイント/洗濯をする親子(2枚組)

予約なしでプエルト・オルダスの空港に早朝入り、航空会社のカウンターで問い合わせると今日も明日も満席と言われがっくりと肩を落とした。しかし、少しねばるとツアー会社のチャーター便に空きがあることがわかりチケットを購入できた。これが当たりで、6人乗り小型機の助手席に座らせてもらい、約1時間半のフライトを堪能することになる。

小型機は初めての体験だが、この国のぼろいアメ車タクシーに乗っているようなものだ。
駐機場所から動き出し、くいっと曲がると、軍用機の間を翼がかからないか顔をフロントガラスに近づけ目視で確認しながら走行する。(地上誘導員はいないのか)
2機続いて離陸するようだが、前の機体と一機分も空けずに滑走路を走行する。(近づきすぎだ機間距離を空けろ)
フロントガラスには私の車にも昔つけていた球状の方位磁石が付けられ、シガーライターのソケットから市販のハンディナビゲーションに電源を供給している。(そんな小さいもので大丈夫なのか)
有視界飛行だと思うのだが何も見えない雲の中を長時間飛び続ける。(前の飛行機が急に止まったらどうするんだ)
雲の切れ目に出て操縦士が上を指差すので見上げると間近に先行機が飛行している。(うーん)

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カナイマ空港に着くとツアー会社の客引きが集まってきて選択が大変とガイドブックに書いてあるが、誰も寄ってこない。あっさりと10ドルの宿は見つかったが、ツアー会社を探しカナイマ中を歩き回った。ボートで滝まで行くツアーは予想よりはるかに高く、最も安くて1日半ツアーが180ドル。これにプエルト・オルダスからの往復チケットを足しただけで360ドルになるので、カラカスやシウダーボリバルで売り込みされた2泊3日の宿食事付きツアーで350ドルや250ドルがはるかに安いことになる。
またしても大きな失敗をしているのではないかと思うと大きな疲労が体中を襲い、丸1日かけてボートで滝まで往復するツアーに参加する気力が失せる。
滝の上空フライトが90ドルでボートツアーより安いことがわかり、明日のフライトを予約する。

この集落には、原住民族ペモン人が生活している。狩猟民族だというが温和に見える彼らが道ですれ違う時、多くの人たちが何とも言えない笑顔で挨拶してくる。黒髪で日本人にも似た顔つきの彼らに微笑まれると、それだけでここまで来て良かったなあと感じてしまう。

空路でしか立ち入れない陸の孤島の集落は、食べ物の物価が異常に高い。眺めの良いホテルで昼食をとろうとすると20ドルと言われ、2ドルのカンコーラを昼食とした。地元の人が利用していたレストランで夕食にしようとしたが、15ドルから1銭も負けなかったので、スーパーでパンとジュースとハムの缶詰を買ってホテルに帰る。
どれもがひどくまずかった。特にフランスパンと思って買ったものがコッペパンで、賞味期限切れでもこれほど固くまずくはならないだろうという代物だった。

この粗末な夕食の何かがあたったのだろうか。それとも異様なほどに鉄分のきつい臭いのする水道水が口に入ったのか。
倦怠感がひどく早めに就寝したが、体のあちこちが痛くて眠れなかった。そして、激しい吐き気と悪寒に襲われた。

<2006年11月14日>

朝、頭がぐらぐらして、熱もかなりある。食あたりなら良いが、これほどひどいものは心当たりがない。こんな密林の奥地で何か大変な病気にかかってしまったのではないだろうか。

何匹もの巨大ゴキブリがわがもの顔で壁を横にはいずり回る安宿で、不安な1日を過ごした。

<2006年11月15日>

<カナイマ集落の子供たちと高級ホテルの敷地内で飼われているカラフルな鳥たち>

昨日は良く眠った。予約していたフライトツアーを断りに這うようにして朝でかけ、食べ物を探しに夕方でかけたが、それら合わせた2時間を除き、30時間眠り続けた。結局、買ってきたチョコすら食べず、水以外何も口にしなかった。

嘔吐と倦怠感はあったが熱は下がったような気がする。エンジェル・フォールの上空フライトにでかけようとツアー会社に9時に出向いたが、人が集まらず雨も降り、延々と待たされて午後2時にようやく飛ぶ。

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スコールの後の上空は雲が多く、時折激しく雨が機体に打ち付ける。先日よりも更にボロい機体はあちこちから雨漏りがしてカメラが濡れる。
小型機はギアナ高地の谷あいを縫うように飛び、奥地にあるエンジェル・フォール周辺の上空にいるようだ。滝は雲に覆われてほんの一部しか見えない。体調が悪く胃が空っぽの私はかなり気分が悪くなっていた。もうこのまますぐ戻って、滝が見えなかったということで金を返してもらいたい気分だ。
パイロットは雲の中を旋回し始めた。滝が現れるのを待つようだ。雲の切れ間から崖が時々正面に見えることから判断して、谷あいを旋回しているのではないか。雲の中に入っている間はいつ崖に衝突してもおかしくないような気がする。頭がぐらぐらして吐き気をもよおしてきた。

何分か経ち滝の全体が見えた。飛行機は滝の落ち口付近の台地上から滝の中腹にかけて斜めに旋回する。見ているだけでも気持ち悪いが写真を撮らねば。しかし、小型機からの視界は狭く、窓は雨に濡れ、ここで止まってという全体が見えるシーンは一瞬しかない。
結局斜め旋回を4周してくれたが、まともな写真は一枚も撮れず、最後は気持ち悪く目を閉じてしまった。

体調と天候が悪かったので正しい認識でないかもしれないが、騒音が大きく汚い飛行機の窓からの眺めでは、せいぜいテレビのきれいな映像から受ける感動ほどしか得られない。やはり、滝つぼまで行かないとダメなのか。
しかし、欧米人向けのネイチャー・ツアーは虚弱な我々が耐えられるものではないと、同じ小型機に乗り合わせた日本人旅行者がしみじみ語っていた。250ドルのツアーに参加した彼は、滝壺で滑って怪我をしたのだと言う。昨日何針か縫ったばかりという彼の手が痛々しく腫れ上がっていた。

カナイマは熱帯らしい自然に溢れ、珍しい動物も見られ、集落の人々も親切な土地だ。これでまともな食べ物があり、体調も良ければ忘れられない場所となっただろう。
ツアーでここを訪れたとしても、少人数で集落や湖周辺を探索した方が良い。やさしい地元の人たちと触れ合っていると、何でもない自然の景観も魅力的に見えてくるはずだ。

<2006年11月16日(カナイマからプエルト・ラ・クルス)>

カナイマからの小型機は昨日エンジェル・フォールに飛んだ機体。
頭が禿げ上がり老年に入ろうかというパイロットは操縦をなめきっている。定員5名の搭乗が終わると、機体をぐるりと回転させて周りを良く見ずに舗装された滑走路わきの土の上を走行する。昨日もそうだったが、なぜこの人は土の上から離陸しようとするのだろうと思っていると、1本しかない滑走路を別の機体が正面から着陸してくる。危ないじゃないか、そんな慌てて離陸するなよ。

離陸後、上空の安定飛行に入るとパイロットは列車の運転士よりも暇らしい。私の隣で彼は札束を勘定し始め、老眼鏡をかけメモを付ける。手放しどころか下を向いて、1、2分に1度しか前を確認していない。今回も助手席に座る私は不安なので代わりに前方を監視していないといけない。
そのうちパイロットは携帯電話を取り出し、騒音の中で電話する。この機体には携帯ナビすらないから電波を発信しても計器に影響などないんだろうな。電話が終わるとまた老眼鏡をかけ、携帯電話の小さな画面を見ながら下を向いてメールを打ち始める。電話は許すからメールは勘弁してくれ。
着陸15分前ぐらいから、彼はやっと操縦に専念してくれる。そして、飛行機はこんな簡単なものなのかと思わせるように何の衝撃もなくあっさりと着陸。まさにハエがとまるような鮮やかさだった。着陸と同時にスイッチやレバー類を倒すと、滑走路上をゆっくりと減速走行している中でパイロットはメールチェック。もうすぐなんだから停止するまで待ってくれ。

体調が悪いのにバスでカラカスまで戻ろうなんて、大きな判断ミスだった。
バスは冷房が効き過ぎて寒い。そして、いつも予定よりも大幅に時間がかかる。
プエルト・ラ・クルスの手前から1時間以上渋滞にはまったこともあり、プエルト・オルダスからのバスは予定より2時間長い7時間半かかって到着。(プエルトオルダスからプエルトラクルスの区間ルート

ホテルで頭痛と寒気が襲ってきた。

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