パキスタンのたび

狂気の雑踏(ラホール)

<ラホール バザールの隘路>

ラホール市街の喧騒に驚いたが、バザールの雑踏も尋常ではない。旧市街ではイスラムの国でよく見られる迷路状の道が広がるが、路地裏の密集度は世界一ではないかと思われるほどのすさまじさだ。通りに対して飽和状態にある歩行者が双方向に動くため、常にお互いがぶつかり押し合いながら前に進む。屋根付きのバザールにもバイクや三輪車が入り込み、少しでも隙間があれば猛スピードで走り抜け、人で塞がれていようと押しのけて進もうとする。
曲がりくねるバザールの路地裏にはいくつかの隘路がある。隊列となった人々の押し合いは強烈で、中心部の密着度は東京の満員電車なみだ。そんな中でもバイクは何とか前に進もうとエンジンを吹かし、もうもうと濁った煙が立ちのぼる。

この隘路でも両方向から同じ圧力がかかり、流れが完全に停滞していた。誰かが何かをしないと動き出さない。この場所で商売する店主が手を水平に差し出し大声で指示する。乗っていた自転車を頭上にかかげスペースを作る者がいたため、流れが少しずつ動き出した(写真参照)。毎日こんなことを繰り返しているのかと思うとあきれ返る。
隘路の群集の興奮状態と比べ、少し離れた果物屋の店先は穏やかだ。私は密集の圧力に疲れ果て、店番の子供の横に座らせてもらい狂気の雑踏をただ眺めていた。

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