[カンボジア]バッタンバン

<トンレサップ湖の水上生活(2枚組)

タイから陸路でカンボジアに入ると世界が変わる。国境の町の道路はほとんどが未舗装で、裏道に入ると終戦直後かと思われるほどの激しい凹凸が続く。
バッタンバンからシエムリアプまでの船旅は川岸沿いや水上で生活する人々の姿が見られ、青い水の眩しさが印象的だった。

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列車でタイ国境の町アランヤプラテートに昨晩入り、国境を朝越えた。
イミグレーションに近づくとタイにいる間からカンボジア人と思しき怪しい人間が現れ始める。強い日差しを避けるため、私に傘を差し出す小さな子供たちもいた。10年前にアンコールを訪れた時、傘を差して数分歩くと1ドルを要求していた子供たちを思い出す。
カンボジアに入りしつこい客引きを追い払い、一般庶民が利用する乗り合いタクシーをやっと見つけた。

20年落ちぐらいの日本車の小型セダン。後部座席に大人4人と幼児、助手席に大人2人が乗り込むところまではそんなもんかと思っていたが、最後に運転席に大人2人が座ったのには驚いた(右写真)。ギアチェンジはどうやってやるのだ。コラムシフトかハンドル操作者と別の人がシフトさせるのか。圧迫されて身動きできぬ乗車中に大きな疑問を感じていたが、降りる際にこの手の国では珍しいオートマ車だということがわかった。
車が大きな窪地を通る度に唯一可動する首が激しく揺さぶられる。ボクシングでパンチを受けたかのような衝撃だ。鞭打ち症になる人はいないのだろうか。
乗り合いタクシーに関して言えば、カンボジアは私の知っているアフリカをも超えている。

バッタンバンで泊まったホテルは新築で安かった。ダブルベッドでトイレ、シャワー以外にクーラー、テレビ付きで12ドルはかなりのお値打ち。床はぴかぴか光っていて虫の気配も感じない。翌朝出発が早かったので、フランスパンと菓子パンを買い、部屋に備えつけられていたプラスチックケースにしまい、蓋を閉めておいた。
翌朝、ジュースを飲みながらフランスパンをかじる。3分の1ぐらい食べたところでパンを持つ手首がチクチクするのに気づいた。すぐにはわからなかったが、体調1ミリにも満たず、透けるような薄いピンク色をした蟻が何匹も手首を這っているのが見えてきた。やばい、食べ物を狙いに来たのか。手に持ったフランスパンを良く見ると、ほとんど同色の小さな蟻が、既に何匹か這っているではないか。慌ててそいつらを手で払い落とす。しかし、またすぐに何匹か現れる。どういうことだと、寝ぼけ眼を見開き、パンに顔を近づける。フランスパンの内側からピンク色の蟻が出てきているようだ。両手でパンを割ると、両方の切り口から蟻が溢れ出てきた。パン内側の気孔を無数の蟻たちが、自分たちの巣であるかのように歩き回っていたのだ。
ひえ~っっ!!蟻パン食ってしまった!

バッタンバンには、シエムリアプまでの船旅をするために来た。
40人乗りぐらいの小型船がサンケイ川を下り、トンレサップ湖に出てシェムリアップに向かう。地元客が半分ぐらいで、他は私以外、白人旅行者。
景色はなかなか良いのだが、スコールが船内に吹き込んできたかと思うと、耐えられないほどの強い日差しが照りつける。また、水上に植物が顔を出す林を航行する時は、両側から木々の枝がバタバタと船内に入り込み、乗客が打ち付けられる。私は中央寄りの席に移動して、林の中を通る度に頭を低くしていたのだが、何度か太い枝で頭や肩を強打された。初めのうちは、これも一つのアトラクションだという風に白人たちが盛り上がっていたが、そのうち大きな体を小さくしたまま鞭打ちの痛みに黙々と耐えていた。

時期にもよるだろうが、この船旅はかなりタフなアドベンチャーツアーだ。

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