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[オランダ領キュラソー]ウィレムスタード

日本人にほとんど知られていない、ずいぶんと小さな島に来てしまったものだ。独立国でもないのにわざわざ立ち寄ったのは、スリナムへ行こうと急に思い立ち、オランダ領キュラソーには元オランダ領のスリナムへのフライトが確実にあるということを知ったからだ。しかし、事前によく調べて準備していれば、わざわざ立ち寄る必要もなかった。サント・ドミンゴでジャマイカ行きのチケットを取ろうと旅行会社に電話していたのだが、すぐには手配できないとかなんとか英語で難解な説明をされ、会話に疲れてしまい「じゃあ、明日の便が取れるそのクラサオ(キュラソーのオランダ語とスペイン語発音)でいいよクラサオ」となげやりに決めてしまったのだ。

ところが、なかなか当たりのスポットのようだ。
まず、サント・ドミンゴのように日本人の気配を感じることがない。また、メキシコやキューバのように人々がみな愛想が良いなんてことはない。海外では、人に物を尋ねてもそっけないのが普通であり、そんな中、たまたま親切な人に出会うといい思いをしたと感じるものなのだ。

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空港ロビーを出て最初に目についたローカルバスに乗り、島の中心部に向かう。小さな島だと思うのだが想像以上に時間がかかり、暗くなり始めた夕方7時すぎ街はずれの終点に着く。まずは街の中心を確認して安ホテルをみつけたいのだが、運転手も乗客も英語、スペイン語とも通じず(キュラソーの公用語はオランダ語、パピアメント語)不機嫌な顔をするだけだ。言葉が通じないなりにも困っている旅行者を助けてあげようという気がなさそうだったので、私は自分の感だけでホテルを目指し歩き始める。薄暗い通りでは今にも襲ってきそうな警戒すべき人物ばかりが目につき観光客など見当たらない。少しでもまともな人を見つけてはホテルの場所や繁華街の方向を尋ねてみるのだが、ほとんどまともにコミュニケーションできない。
1時間以上歩き回ったが満室だったホテルひとつしか見つけられず、もう足で見つけるのはあきらめ、タクシーで安めのホテルに連れて行ってもらうしかないかと考えた。タクシーをつかまえるため、バスを降りた場所に戻ろうと公園を横切っていた時、数人で夕涼みをしていた老人が私に声をかけてくる。会話にならなかったが「ホテル」だけで全てを理解した老人は早足に私の前を歩き始め、空き室のあるホテルに導いてくれた。
そのホテルは海に面していながら25ドルでエアコン、シャワー付きと私の希望をほとんど満たしていたのだ。
そして、そのホテルから5分も歩くと、バスを降りてからずっと見つけることができなかった繁華街があった。外国人観光客があふれ華やかな雰囲気を醸し出す通りを歩いていると、ほっとして幸せな気分になった。

<2006年10月31日>

<浮橋のクイーンズエマ橋(2枚組)航空写真

キュラソー島にあるウィレムスタード(ウィレムスタッドあるいはウィレムスタット)のみどころはクイーンズ・エマ橋を挟んだカラフルな建物が並ぶ中心街しかなさそうだ。この歩行者用の橋は舟型をした橋桁に架けられた浮き橋(航空写真でも舟形をした橋桁が十数個並んでいるのがぼんやりわかる)で、運河を船が通る際に一端が固定されたまま、もう一方が岸から離れて斜めに動いて水路が開けられる。小さなボートが通るだけでも、歩行者を止めてゆっくりと橋を動かす。ずいぶんと呑気なものだが、観光の目玉なので仕方ないのだろうか。

このぐらぐらと揺れる橋の上を歩くと、両側の岸辺に並ぶカラフルな建物が目に入り、常に海からの心地良い風を受け、この上ない快感を覚える。
橋を渡っているのは観光客よりも圧倒的に地元の人が多く、橋の上での彼らとの触れ合いがなぜかわくわくとして心躍るのだ。

それにしてもよく蚊に刺される。特に膝下を露出した足は、これだけ刺されてかわいそうだからやめておくかという気にならないのだろうか。肌の中で少しでも腫れていない部分をみつけて刺していく、情け容赦のないやつらだ。
実際は蚊だけでなくブヨのようなものにも刺されているようだ。彼らは羽音をたてずに接近して、とまった瞬間に針を刺したような痛みを与えながら噛み切る(ノミかもしれない)。そいつのせいか、大量の蚊のせいかわからないが、水膨れもいくつかできている。

[キューバ]ハバナ

<旧市街にあるプライベートルーム2階の窓から繁華街と逆の方向を見た朝の風景>

<ハバナの観光客が多い通りを練り歩く道化団(2枚組)

空港の税関を過ぎたところでキューバの地図やガイドブックを売る店があった。『地球の歩き方』ではキューバの情報が乏しいためロンプラか何かを買おうと思っていたので8ドル程度のガイドブック(ほとんど役に立たなかった)を購入。そこの店員に運良くプライベートルーム(一般家庭の部屋を宿として提供)を紹介される。『歩き方』の一番安いホテルが80ドル以上で、どうやってプライベートルームを見つければ良いのかわからなかったので、32ドルと決して安い部屋ではないが大いに助かった。

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『歩き方』では市内までの交通手段として30ドルだというタクシーしか紹介されていなかったので、ついでにその店員に安い移動方法を教えてもらう。空港から1km以上先にある交差点まで行けば、乗り合いタクシーが捕まえられるというのでその場所を目指すことにした。
空港ビルから外に出る道は車専用にもみえるが、車が少ないので問題なく歩行できる。しかし、空港を利用する現地の人が歩いていても良さそうだが、歩行者は全くいない。強い日差しの中、不安を感じて歩いていると、目の前にルノーの小型車が停まった。私が乗り合いタクシーでセントロ(中心)まで行こうとしていることを告げると、その運転手はとんでもないという顔をして、いいから自分の車に乗れと勧める。
微妙だった。親切にただで乗せてくれる、親切そうに送ってくれるがTAXI代相当の金を要求される、ひとけのない所に連れて行かれ襲われる、の大きく3つのケースが考えられる。3つめだけはないことを祈り彼の車に乗った。
結果は期待以上で、市内中心部に入ると、彼はアドレスを元に人に聞きまくってプライベートルームを探し出し、私を降ろすとすぐに走り去った。私は車内でずっと彼を疑い続け、人の善し悪しを探りながら会話していたのが申し訳なく感じる。成田でキューバ人を見つけたら、東京でも埼玉でも送ってあげたいという気持ちだ。

宿は街の中心から近くて良いのだが、旧市街の地元住民が集まる場所にあり、夜中の騒々しさは半端でなかった。通りに面したエアコンのない2階の部屋に朝4時過ぎまで騒音が響き渡り、まるで喧嘩の絶えない場末の酒場で横になっているようだ。時々、飛び起きてしまう程の大音響や叫び声があがり、3、4人は殺されただろうなと夢と現実のはざまで感じていた。朝は6時にもなると清掃車の音や台車をひきづる音が鳴りだし、不眠による体中のしびれと共に起き上がる。宿を替えるしかないと思ったが、観光案内所のないキューバでどうやってプライベートルームを見つければ良いかわからず、そこへ2泊してしまった。

キューバの道は閑散としている。人も車も少なく密度が低い。逆に言えば、道が十分整備され歩きやすいということなのだが、夜は暗さが半端でない。観光客の多い地区以外は、人通りが多い道でも街灯が暗く少ない。また、店も疎らにしかないため最初の夜は緊張感があった。オーナーが言うには、ハバナの中でもこのプライベートルーム周辺だけは、スリや強盗の多い危険地帯だという。
しかし、暗さに慣れてくると恐怖感は薄れてくる。暗闇の中でも涼しくなった通りを幼児たちが走り回っている。私の感覚では、新宿や池袋よりはましなレベルではないだろうか。この程度で危険だということは、キューバが安全な国のような気がしてきた。(2泊しかしてない者が言っていることなので鵜呑みにせず、キューバを旅行される方は地元の方の言うことに従って下さい)

<参考図書>カリブ海の島々〈2006~2007年版〉バハマ・キューバ・ジャマイカ・ドミニカ共和国
最新版=>B24 地球の歩き方 キューバ&カリブの島々 2019~2020

通行人の感謝 (ハラル)

<強い朝陽を浴びる少女>

ハラルは海外からも信者が訪れるイスラムの聖地。百近くモスクがあると言われ、古くからの街並や博物館など観光スポットがいくつかある。外国人旅行者はそれほど見かけないが観光客ずれした人が多いようで、行き交う人から英語でしつこく勧誘を受ける。そうかと思うと異教者の入場が許されないモスクを入口から覗いていただけで、中からすさまじい剣幕で関係者が現れ、私が慌てて立ち去ると後ろから石が飛んできたりする。
とんでもない国に来てしまったなと思っていた。

迷路状になった旧市街を歩いているとガイドを強要する少年が何人も現れる。開館前の博物館にカメラを向けていると、10歳ぐらいの少年と6歳程度にみえる女の子の兄妹が現れた。妹も学校に通っているのか、本とノートを抱えている。濃い褐色の肌は滑らかで、手足が細く背筋を伸ばして立つ。小さな鼻と口に比べ瞳が大きく、子どもらしいくりくりとした目をしているのだが、片目が赤く充血している。兄はガイドの申し出を断られると、妹を撮影させてお金を取ろうとする。女の子は目に違和感があるだけでなく、強い陽射しを嫌がり、この場を早く去りたがっていた。
私は、しつこい少年を無視して博物館の外観を撮影した。ファインダーの隅に女の子が入った。
「今、妹を撮っただろう」
「撮っていない。博物館を写しただけだ」
「いや、撮ったよ。絶対撮った。撮影代5ブルだ」
兄と言い合っている間に妹が充血した目を気にして汚れた手で擦り始めていた。
「だめだ。(手で目を擦ったら)だめだ」
私は女の子に叫びながら、ザックをあさった。自分が使ったこともない目薬など持っていない。代わりとなるものといったら、ミネラルウォーターしかない。ペットボトルを取り出し彼女の手を洗った後、充血した瞳を水で洗おうとボトルの口から目に流し込もうとしたが、彼女がじっとしていないこともありうまくいかない。
そこへ通行人が駆け寄ってきた。彼は私が行なおうとしていることを理解して、女の子に話しかけ、ペットボトルのふたに水を満たすと、ふたから充血した眼に水を何度か注いだ。彼女は目をぱちぱちさせながら、まだ赤いつぶらな瞳を開いていた。

「ありがとう。感謝する」
機転の利いた行動を取った男性が私に言った。
「いいえ、こちらこそ、ありがとう」
私は助けてもらった彼になぜ礼を言われるのか理解できず、あわてて感謝の意を表した。
「いいや、ありがとう。本当にありがとう」
再び彼に言われた時、この通行人の気持ちが少し伝わってきた。

たとえ1人でも良い人に出会えたら、そこは私にとって良い国である。