<ハラルの朝の道を行く>
アフリカには、あらゆる物をさらけ出し顕にする人々が多い。感情や生活を世間体や秩序、人工物といったもので覆い隠そうとしない。すぐ汚れるものは洗わない、すぐ乱れるものは正さない。時には、なんて動物的なんだろうと感じることもあるが、より人間の本能に近い行動なのだとも考えられる。
われわれ旅行者も彼らに感化され、すぐ怒り、すぐ笑い、すぐ友達になり、汚れた服と埃だらけの頭で街を歩く。そんな生き方が心地よく感じるようになってくる。
エチオピアからの帰国時、ドバイからバンコクへの便がオーバーブッキングのためビジネスクラスの席になった。私はビジネスクラスが初めてであった。周囲の乗客から浮かないよう、それなりの振る舞いをしなければならない。洗練されたスチュワーデスの姿が目に浮かび、薄汚れた衣服が気になる。
空港のトイレであわてて着替えるが、埃まみれの靴に替えはない。ああ、これではアフリカ帰りでエコノミーからのグレードアップとばれてしまうではないか。搭乗アナウンスの声にせかされながら、必死にタオルで靴を磨いているのだった。