[フランス]ニース
<ニースの海岸/ニースの港(2枚組)>
ニースは夏。日差しが強く、ビーチで横になるのにちょうど良い暑さ。
海は青く、水着姿やトップレスの海水浴客が輝いて見える。これがニースの全てなのだろうか。海水浴をしなくても一年中リゾート気分が味わえる街と思っていたが、人と車が多い割に道が狭く、更にあちこちで大がかりな工事をしているため非常に歩きにくい。美術館がある以外に特に見るものもなさそうだし。
安宿が豊富にあり旧市街には庶民向けの安食堂が多いというガイドブックの記載を信じて来たが、世界的な保養地のニースが安いわけない。かなり探し歩き、相当しつこくディスカウントを試みたが、今回の旅の宿泊費最高値を更新して52ユーロになってしまった。物価基準食品であるケバブも旧市街ですら最高値の4ユーロ。ガイドブックは何と比較して安いと言っているのだろう。これからのフランスの街が更に高くなっていくのだろうか。
今のところ人は概ね良い。地図を持ってうろうろしていた時、2度も女性から何を探しているのと愛想よく話しかけられた。通常の観光地ではかなり警戒すべき状況だったが、2人とも親切に道を教えてそのまま立ち去った。さすがフランス、れっきとした先進国だ。
[モナコ]モンテカルロ
モナコは山が街に海に迫っている。
ニースと異なりモナコは事前に描いていたイメージに近い。車が穏やかに走り、歩道はゆったりとして犬のフンもないので歩きやすい。高級ホテルがいくつも並び、静かな公園と共に無料トイレも備えられる。これであれば物価が高くても許される。ある程度金のある旅行者だけが観光するところかと思っていたが、なぜか高校、大学ぐらいの若者が観光している姿が多く、昼時に比較的安いサンドイッチ屋に長い行列を作ったり、あちこちに設置されたベンチでスーパーから買ってきたパンやサラダを食べている。
ニースに入ったら栄養とボリュームのある食事を取り安宿でのんびりできると思いこんでいたため、イタリアで気合いを入れ、ひもじい思いに耐えてきたが、それが勘違いだとわかり急に疲れが回ってきた。汗をかき、毎日強い日差しを浴びているのだから、ビタミンが消失して不足しているのは明らかだ。
若者たちの真似をしてスーパーでサラダを買おうとしたが、小さめのカップでも3ユーロぐらいする。ビニール袋入りの野菜カットパック値引き品をみつけた。しかしドレッシングは高くて買えないのでどうやって食べようか。塩味が強すぎてなかなか減らないピーナッツがあるのを思い出した。野菜カットに塩ピーナッツをまぶし、パンに挟んで食べる。大変安価で栄養のある食事をまずまずの味で取ることができた。
やっと、少しだけ賢くなったような気がする。
[フランス]マルセイユ
<ノートルダム聖堂からマルセイユ郊外を望む>
マルセイユはフランスでパリの次に有名で歴史のある都市。観光地でもあると思っていたがちょっと違った。
北アフリカや中近東の人たちが増え私好みの匂いがしているが、今ひとつ面白味がない。眺めの良い丘の上に建つノートルダム聖堂(航空写真)と2、3km沖合の小島に岩窟王の舞台となった牢獄があるだけ。もう少し何かあるはずだと1日歩き回ったが、他に見つけることができなかった。
安そうなアジア食堂にトルコ食堂、そして明るいスーパーが並ぶ通りを見つけたが、ケバブの夕食を取り、買い物も済ませた後だった。その通りはホテルのすぐそばで、何度か覗いていたのに気づかなかったのだ。ヨーロッパは1ヶ月半旅しているというのにどうも鼻が利かない。
宿代はニースの最高値から一転してユーロ圏でギリシャのテッサロニキに次いで安い25ユーロ。ガイドブックで治安が悪いとしきりに脅す駅周辺にある宿だが。
[フランス]アルル
<アルル旧市街/周辺の教会遺跡(2枚組)>
アルルは、小さいながら魅力的な街というべきか小さくてつまらない街と評すべきか微妙だ。
少なくとも世界遺産に指定されている遺跡はつまらない。
(航空写真で見る円形劇場周辺はきれいだが)
小さい、汚い、そして保存状態が悪い。日本だったら県の指定文化財程度だろう。ヨーロッパの世界遺産は認定基準が甘い(世界遺産は観光資源として評価しているのではないが)のではと思われるものが多い。一度指定してしまったものを取り消す訳にいかないのなら、それなりの遺産になるよう修復保存すべきだ。
しかし、世界遺産に指定されていない教会遺跡で趣深い所があり、教会と広場を中心に細い路地が広がる旧市街は面白味がある。
旧市街の狭い道を車がスピードを上げて走ったり、教会前の広場で少年たちがスケートボードを乗り回して観光客を寄せ付けないといった不快な面が改善され、ほんの少しだけでも遺跡を整備すれば、もっと魅力的な観光地になるはずだ。今のままでは休憩が必要な疲れた旅人にしか勧められない。
[フランス]アヴィニョン
<法王庁宮殿正面(航空写真回転拡大可)>
フランスでやっとこれはという遺産に出会った。
アヴィニョンには14世紀にローマ教皇の本拠地だった宮殿がある。内部のほとんどの部屋をオーディオガイドを聞きながら見て回ることができる。さすが教皇庁、部屋の大きさやたたずまいに威厳が感じられ、本物の遺跡を見ているんだという気になった。室内の壁画や彫像、装飾品がほとんどないのが残念だ。火事で焼けてしまったり、フランス革命時に消失、破壊されたり、パリに持ち去られたりしているそうだ。パティストリーなどパリにそれらしき物があるなら返して欲しい。そうすればもっと楽しめるだろう。
街はアルルよりは大きいが、城壁に囲まれた地域はほどよいサイズにまとまっていて、所々に歩いて楽しい通りがある。ホテル、博物館のスタッフ、スーパーの店員など人あたりがよく、歩道も歩きやすいので気持ちよく観光できる。プロバンス地方の中心だというが、街並みや周辺の景色からは特異さが感じられない。レストランで食事をする旅行者はプロバンスらしさを味わえるのだろうが。
<フランスめも>鉄道はフランスに入って急に使いにくくなった。フランス南部に限ったことかもしれないが、本数がかなり少ない。イタリアではトーマスクック時刻表に載っていないローカル列車がいくらでもあり、主要な駅間は1時間に1本以上が普通だったが、フランスではトーマスクック掲載の列車が全てで、主要駅間も日に数本というパターンが多い。つい、イタリアの感覚で出発時間を確認しないまま駅に行き、ニースでもアルルでも2時間以上待たされることになった。
そして、運賃が高い。イタリアの2、3倍だろうか。それでもまだ日本よりは安い気がするが。
車内はイタリアより大分きれいだが、シートの間隔が異常に狭いのが気になる。古い車両の対面式シートは満席になった時大柄なフランス人の足がどのように配置されるのかが想像できないほどの狭さだ。
ニースから気になっていたが、野犬を見かけない割にはどの街にも犬のフンが多い。歩道のあちこちでにおいが立ち上るモノや歩行者に踏みつけられたモノが見られる。犬を散歩させている時、綱をつけていないことが多い。しつけが良く襲いかかることはなさそうだが、よだれを垂らした大きな犬が鼻を私のズボンにこすりつけようとしてきた時には、かなりあせった。列車内の通路を塞ぐように寝そべる犬もいる。
犬嫌いには耐えられない。
フランスでも鳩やツバメがやたらといる。アルルでは、鳥のフンまみれのボディーで走る車を数多く見かけた。木の下で鳥のフンが固まるところは臭い。動物嫌いの私にとって、その面での辛さはインドなみだ。
人はよろしい。ストラスブールを含めてフランスの街全てで、人々の対応が非常によい。時々、不気味なほどに愛想がよかったり、親切な人に出会う。英語を理解していてもフランス語しか話さない人が多いという噂も昔話のようで、ほとんどの人が英語を話すため、モロッコに向けたフランス語の練習ができなかった。最後にパリ周辺にも行くが、人あたりが冷たいと思っていたフランス人の印象を変えなければいけないかも。
[スペイン]バルセロナ
<サグラダ・ファミリア/グエル公園(2枚組)>
バルセロナは街としては良い所だ。歩きやすい、地下鉄はわかりやすい、大都会の機能を持ちながら、昔ながらの魅力的な路地や歴史的建造物がところどころにある。犬が少なくフンがない、喫煙者があまり多くなく、投げ捨ては少ない。警官をよく見かけ、交通マナーは日本人なみだ。旅行前にイメージしていたヨーロッパの街がやっと現れたという感じだ。
しかし、観光地という点では、ガウディの作品に興味がない人は、わざわざ遠くからやってきて見にくるほどのものはない。
サグラダ・ファミリアは今回の旅でぜひ見ておきたい観光スポットのひとつだったが、実物を見るとなんか小さいし、建設中の状態を見学するのは建築関係者だけで良いのではという気がする。しかしながら、多くの観光客を集め、工事現場の写真を取らせて楽しませているというのは大したものだ。かくいう私も階段で上まで登ることができたので満足度は高い。
他にもグエル公園などガウディ建築物を見られる場所が多くあるのだが、奇をてらうパターンが同じような気がして飽きてきてしまうのは、私だけ?
アビニョンから列車を乗り継ぎバルセロナに向かう。
国境の駅で2時間の乗り継ぎ待ち時間があり、面白そうな街であれば宿でも取ろうかと思ったが、小さな海水浴場のある漁村という雰囲気だ。漁村なのに旅行者が多いためか食べ物が高い。予定通りバルセロナに向かうことにした。
スペインに入ってから公共トイレが無料になった。よい事だ。
スペインにおける挨拶はオッラー。イタリア、フランスではボンジョルノ、ボンジュールと言われ、時にはスィニョーレ、ムッシュウというくすぐったくなる言葉まで付けられていたのにスペインでは突然オッラーという投げやりな短い言葉だけ。
車掌やホテルのスタッフからオッラーと挨拶されてなめられてると感じるのは、私だけ?
[スペイン]モンセラット
マドリード行きの列車が満席で午前発の切符が取れなかった。次の列車は到着が夜になり、マドリードで夜の宿探しは危険だという複数の情報を目にしてしまったため、夜行で朝着く列車で入ることにした。スペインは列車の本数が非常に少ない上に事前に予約しないと満席になりやすいようで極めて使いにくい。
空いた時間を利用してバルセロナから1時間のモンセラットを訪ねる。
モンセラットはキノコ岩が寄り集まった山に教会や修道院が点在する観光スポットだ。黒いマリア像が有名だということで、私も長い列に並んで拝ませてもらう。包容力が感じられる親しみやすい表情だ。マリアが手にする玉にさわると、やさしいお顔の仏様に触れたような気持ちになった。
モンセラットには山岳鉄道やケーブルカーなど様々な乗り物があるが、ハイキング感覚の山道も整備されている。登山の好きな私はついつい登ってしまうのだが暑さと空腹で早歩きができない。そんな私を老夫婦があっという間に抜き去って行く。ヨーロッパの老人は足腰が丈夫だ。
バルセロナは良い街だと思っていたがそうとも言えなくなった。夜の街がうるさすぎる。深夜12時ぐらいまで騒いでいるのは許せたとしても、この街の人たちは朝の6時まで大騒ぎを続けるという狂乱ぶりだ。1日目の夜は日曜だからうるさいのかと思った。バルセロナのメインストリートであるランプラス通りに面した部屋だから仕方がないと考え、反対側の部屋に替えてもらった。部屋を移ってからは日中ほとんど通りの音が聞こえなくなったが、ワールドカップの試合で勝利したことによってその静かな部屋にも響く雄叫びや凱歌が何度も襲ってくる。もう終わるだろうと耐えながら、ついに前の晩と変わらぬ眠れぬ朝を迎える。
[スペイン]マドリード
<マドリード駅構内>
バルセロナからマドリードまでの夜行は比較的楽だった。3段の簡易ベッドにクーラーが効き、揺れをあまり感じず、同室者たちは静かで結構眠れたようだ。国内の夜行なので、国境越えにより深夜に起こされることがないのが良い。
マドリードもバルセロナ同様に道がわかりやすく、歩道が歩きやすい。美術館が多い街だが、王宮以外にこれといった見物がない。街の景色に特徴的なところが少なく、これはという光景があったとしても多くの障害物により遮蔽されている。
マドリードはバルセロナより更に暑く、今日は湿気も多い。バルセロナが東京の暑さだとするとマドリードは大阪の暑さ。地下鉄が使いやすいが、駅の通路は蒸し風呂の暑さで、車内にはクーラーが入っていない。乗客は苦しそうに中国扇子で風を送る。朝8時すぎの電車でもそれほど混雑していないのが救われる。
マドリードはスリや置き引きが多いだけでなく、首絞め強盗が頻発しているという。首を絞められ気絶したところでパスポートや金品が奪われるという中南米に多い犯罪だが、地下鉄や人通りの多い道を歩いている分にはそんな危険は感じない。ただ、1本裏道に入っただけで急に浮浪者が増え喜捨を強要してくる。
マドリードは日本語表記が多い。バルセロナでも観光名所の案内でいくつかのヨーロッパ言語と共に日本語が記されていることがあったが、ここでは歩行者に対する道案内でスペイン語、英語、日本語の3つが並んで表記されているのが目につく。日本人には大変ありがたいことだが、常に日本語表記があるわけではないので多少とまどう。
ホテル内での案内も含め、ヨーロッパでは2つから4つぐらいの言語を並べて表示しているケースが多く、その順番が決まっていないので英語表記を見つけだすのに時間がかかる。色かフォントを言語によって統一して、わかりやすくする方法はないものか。
[スペイン]セゴビア
<アルカサル/水道橋(2枚組)>
中世の街並みが残るというセゴビア。マドリードから列車で片道2時間、日帰りで出かけられる。
こぢんまりとまとまった魅力的な街。大きく長い水道橋があり、立派な教会と白雪城のモデルになったというアルカサルもある。なかなか良いのだが期待したヨーロッパの美しい路地がみつからない。狭い道を多くの車が行き交い、教会周辺などスペースが少しでもあると駐車車両が連なる。これだけの素材があるのだから、本気を出して手を加え規制をすれば、これぞ中世と思わせる魅力的な観光地になりそうだ。
帰りは本数が圧倒的に多いバスに乗った。ほとんど高速道を走り、列車の半分の1時間強で着く。車内の快適さは劣るが、これでは列車より料金が高くても仕方ない。
バルセロナと異なりマドリードの人々の表情は固い。しかし、対応が悪いわけではない。ホテルの掃除婦に顔を合わせるとこわばった表情でこちらを見た後、視線をそらして小さな声で挨拶する。そんな感じだ。
これは、バルセロナも同じだったが、マドリードの人々に話し好きが多い。博物館のスタッフもチケット販売そっちのけで議論して、展示場でも監視員たちが真剣に言い争いをしている。
列車内の若者たちは、一人の話に二重三重に声をかぶせ、それぞれの声が独自の音域を保ち車内に共鳴していた。彼らは口先で声を出すのでなく、頭蓋骨かあばら骨を振動させて音を出しているようだ。
また、話す速度が異常に速い人が多い。単に早口言葉をつなげて話しているのではないかと思うほどだ。意味のある会話をしているならば、相当頭の回転が速いのだろう。
[スペイン]コルドバ
<コルドバ ユダヤ人街の路地(2枚組)>
チケットを買うために30分並び、30分後発車のチケットは取れず、2時間後発となる。切符売り場の列はどれも長く動きが遅く、私はまだましな方だった。明日以降の予約のためにロビーで待たされる人も多い。
長距離列車に乗る際は、荷物の機械チェックがあり(テロ後の対応かどうかは不明)、各ホームの手前にカウンターがあり、チケットの確認がある。飛行機なみだ。スペインではイタリアのように気軽に列車に乗れない。
コルドバは暑い。南に下っているから当然だが、どんどん暑くなる。スペインってこんな暑い国だったんだろうか。乾燥しているので、中東かインドにいるような気分だ。マドリードからの車窓も乾燥地域の疎林地帯のようだった。
エジプトのように身構えて迎えた暑さでなく不意を突かれた暑さのため、観光に身が入らない。ビタミン不足でもあるので。
スペインに来てから思うように写真が撮れない。素人にわかりやすい定番シーンがないのだ。これはという建築物の周りには撮影や鑑賞に適したポイントが用意されていない。また、修復工事中の場合が多く、イベント用のテントや舞台などにも邪魔される。コルドバの名所にもほとんどカメラを向けたくなるアングルがなかった。
歩いて楽しいユダヤ人街の路地を撮影してみたが、中年カップルを撮影しても面白くない。(表の写真)
夜9時ごろにサッカーをする子どもたちを見つけたが親が監視しているのでこんなもんしか。(裏の写真)
今や子どもからばあさんまで観光客のほとんどがカメラを持ち、絵葉書のような写真を自分で撮るのが楽しい時代なのだから、観光地はカメラ写りを意識した対応が必要だ。
[スペイン]セビーリャ
<アルカサルの庭園/黄金の塔(2枚組)>
セビーリャも南国の街。観光ポイントであるカテドラル(教会)とアルカサル(城)は内部が広く見応え十分。セゴビアのカテドラルの柱の太さに驚いたが、こちらはさすがにスペイン一の大きさを誇るだけあり、更に柱が太く天井も高い。ヨーロッパで大分見飽きてきた教会だが、想像以上の壮大さに新たな感動があった。
アルカサルもイスラムによる建築がベースなだけに今までの城とは異なる魅力が見られる。
カテドラルもアルカサルも全体を見渡せるのだが、外観の象徴的ポイントがないのが残念だ。これが今ひとつ知名度を上げられない原因なのでは。
スペインに入ってから、街の至る所にあるBARやレストランでおいしそうな食事が目につく。しかし、スペイン南部に来ても観光地周辺の値段はあまり変わらないので店で食事することはない。最近、スーパーの買い物による食事が定番になってきた。サラダ用野菜セット(1.5ユーロ)、ハム(1.5)、オリーブ(0.5)、パン(1.5)、オレンジジュース(1)の合計6ユーロで2食分ぐらいになる。これにケバプと水でちょうど1日分目標の10ユーロだ。(実際は魚の缶詰をつけてしまったりコーラに手を出してケバプまで届かないのだが)
多少栄養に偏りありそうだが、ヨーロッパを出るまでこれで凌ぐしかない。
[スペイン]グラナダ
<アルハンブラ宮殿 ライオンの中庭/グラナダ旧市街の眺め(2枚組)>
プロはかなりきれいに写すものだ。
アルハンブラ宮殿に入り、アーチが幾重にも連なる写真が印象的なポイントを探したが、気づかずに通り過ぎていた。
ライオンの中庭がそのポイントだったが、そこには写真のような光景はない。私が見たライオンの中庭では琉球を連想させる屋根とイスラム建築が不思議な調和を保っていた。(表の写真)
その他の場所も含め、美しい部分はいくつもあるのだが、イスラム建築にありがちな局部的な美なので、そのつもりで臨まないとどこがアルハンブラなのだと探してしまう。
アルハンブラ宮殿から見渡せる旧市街の光景も見所の一つだろう。純白の壁に薄いベージュの瓦屋根が密集する姿は独特の美しさがある。(裏の写真)
コルドバ、セビーリャ、グラナダと訪ねたが、似たような街を3つも観光する必要はないような気がする。どこかひとつを選ぶとなると、やはりグラナダになるんだろうな。
[スペイン]ロンダ
<ロンダのヌエボ橋(航空写真)/市内から見下ろす牧場(2枚組)>
峡谷に橋の架かる街。ガイドブック(ロンリープラネット)のその言葉に惹かれてロンダに立ち寄ることにした。
アルジェリアのコンスタンティーヌのような街を期待したが、橋は一つしかなく、川には水がほとんど流れていなかった。小高い丘の城塞都市からは周辺に広がる長閑なアンダルシアの風景を望むことができ、小さな街だが楽しめないこともない。
しかし、海外から来てまで観光するような所でなさそうだが、街中のレストランなどにグラナダよりはるかに多く日本語表記が見られる。来るのかな日本人がここまで。
グラナダからの列車はかなり揺れる。(鉄道利用のグラナダからロンダまでのルート、(別)で車によるルート)
先進国の列車がここまで揺れていいのかと思えるほど。いかにもローカル列車を感じさせるディーゼル車による各駅停車だが、駅が少ない。イタリアに比べ、はるかに列車本数が少なく乗客も少ないのは、人口密度が低い以外に原因があるのだろう。
今日も暑い。この辺の特徴としては30度以上の時間帯が長いことだ。夜7時でも強い日差しを感じ、日なたでは30度を超える。
しかし、陽が沈むとぐっと冷えてくる。ここまで南下して、ホテル代がかなり安くなってきた。朝食は相変わらずつかないが、かなり清潔な部屋で21ユーロ。物価の安い東欧諸国なみだ。ただ、この暑い街でエアコンもファンもないのが不安だったが、夜の急激な冷え込みにより不要だった。
[モロッコ]タンジェ
<タンジェのメディナ内(2枚組)>
1時間半のフェリーの移動でモロッコに入る。さすがに雰囲気の変化は感じるが、タンジェはヨーロッパの延長上にある。東欧の国に来たぐらいの気分。
スペイン南部なみの値段で質が若干落ちたホテルに部屋を取り、メディナに向かう。メディナに近づくに従い、日本人かとかガイドは要らないかと声をかけてくる男が増えてきて、やはりここはヨーロッパでないなと感じてくる。
メディナで路上で戯れている子供たちと仲良くなり写真を撮っていると、大人たちに囲まれ金を払うよう迫られる。彼らは、公用語のアラビア語、フランス語以外にスペイン語と英語も話す。どの言語も理解できない振りをしてその場を逃げる。
その後もカメラを持って歩いているだけで、少年や大人たちが寄ってきて意味もなく金を要求する。
モロッコ、ちょっとガラ悪いんじゃない。
[モロッコ]フェズ(1)
モロッコの大きな駅には列車運行予定を示す電光掲示板がある。特にタンジェの駅舎は新しく切符販売は迅速で、駅だけ見ると、スペインやフランスよりも進んだ国かと思ってしまう。
駅の案内所で時刻表をもらう。B4サイズの用紙1枚両面に印刷されたスケジュールがモロッコ鉄道の全てなのだろう。主な都市は1日4~8本は走っている。モロッコ国内の移動は鉄道中心で大丈夫だということがわかった。
タンジェを9時に出発、途中乗り換えで1時間待ち15時にフェズに着く。車内は東欧より清潔でイタリアなみ。
フェズのメディナは世界一複雑な路地が広範囲にわたると言われるため、2泊して1日半は歩き回ろうと思っている。そのため、今日は下見のつもりで気の向くままに歩いてみた。
確かに規模は大きそうだが、他のイスラム諸国のメディナとそれほど異なる部分はみつからない。屋根が架けられた路地が多く、人通りが多い所は蒸す。そして、時々、屎尿の強い臭いが漂う。こんな所を観光で歩くなんて余程の変わり者だ。
「コンニチワワ。コンニチワワ?」
日本語で声をかけてくる人がよくいるが、誰から教わったのか変な言葉を発する者がいる。「『こんにちは』は挨拶の言葉だ」とツッコミたくなる。
揚げ物、なつめやし、くるみなどを買い食いしても1ユーロに満たない。道を間違えれば、そっちは行き止まりだと教えてくれる。路地の両側からみつめている街の人々の目はあたたかい。メディナの路地めぐりがだんだん楽しくなってきた。
食費を押さえるため、これまで西ヨーロッパではスーパーで買ってきた素材で食事を済ませるという旅らしからぬことを行ってきた。しかし、モロッコは庶民的な店を選べば安く食事できる。新市街にとったホテル周辺の表通りでレストランを探した。ヨーロッパのカフェバーを真似た気取ったスタイルの店が多い。歩道に出されたテーブルで、客は粉塵のあがる車道を向いてコーラやジュースを飲むだけで誰も食事していない。それで地元の人たちで混雑している裏通りの暗く汚い店に入った。
トイレ紙風の固いナプキンの上に置かれたパンに休みなくハエが群がる。ハエを追い払いながら丸く平たいパンの表面をつまんでいたが、メインが来たのでパンをちぎり取ろうとして持ち上げた。するとパンの裏側に親指以上の大きさの黒い固まりが。何だろうと目を近づけると、もぞもぞ動いている。ヒエー、先に食事中の虫だ。平たいパンの表裏を虫と食べ合っていただなんて。
清潔だが物価が高い国と物価は安いが不衛生な国、旅行先としてどちらがいいのだろうか。
[モロッコ]フェズ(2)
<なめし皮作業所>
世界一巨大な迷路フェズで知らない道を歩き大いに迷ってみようと思ったのだが、袋小路が多く結局同じ道に戻ってしまう。地図上で近くにあるはずのなめし皮作業所にたどり着けず、声をかけてきた男に連れて行ってもらう。一帯に近づいてきただけで、噂に違わず悪臭がすごい。客引きに連れて行かれたのは皮製品を扱う土産物店で、その屋上から作業所(上の写真)を観察できる。ここで見学料を支払うか店で買い物をしないといけないのだろう。しかし、この臭いをかいでしまうと皮製品を買う気がなくなるのではないか。
もとからその気のない私は店内見学につきあっただけで何も買わず、撮影料を取られることもなく店を出てくる。モロッコ人はあっさりしているなあ。インドでこのような状況であれば、何か買わなければ生きて店から出られないのではというほど脅されるのだが。
メディナ内の人通りが多い商店街を抜けると密集した建物と狭い道が続く住宅地がある。なめし皮作業所の近くを流れる川には篭に詰められたゴミが次々に捨てられていく。隣のユダヤ人地区の川では少年たちがプラスティック容器を持って水を汲みに来ている。メディナから3km先には現代的都市生活が営まれる新市街があるというのに、城壁で囲まれた狭い地域に密集して生活し続ける必然性があるのだろうか。
<路地内のお子さま>
食堂の屋上でメディナの路地を見下ろしながら、タジンと呼ばれる土鍋料理を食べた。よく煮込まれた鶏肉と野菜が口の中でとろける。これだ、こういう料理がずっと食べたかったのだと感激した。
猫が2匹、食事中の客にねだりながらテーブルの間を歩き回る。客の足に鼻をこすりつけ蹴り返されても、離れずに下から見上げているだけで、決してテーブルには上がってこない。
ところが、食事を終え手を洗おうと席を離れると、あっという間に2匹の猫が皿に残された鳥の骨と皮を奪い、テーブルの下に運んで静かにむさぼっていた。
よくしつけられた猫たちだ。
[モロッコ]メクネス
<モスクで手足を清める参拝者>
<路地の子どもたち>
フェズからカサブランカに向かう途中にあるメクネス。ここも世界遺産に指定された古都だと知り、急遽、立ち寄ることにした。
モロッコはロンリープラネット・ヨーロッパ編におまけで付いていたページを頼りに観光しているため、情報不足による手探りの状態が続いている。メクネスのページには地図がないため、ツーリストオフィスの概念的な地図をベースにして地元の人に尋ねながら歩く。
フェズやタンジェでは、観光客ずれした人に嫌な対応をされる場面があったが、モロッコ人は柔和な顔つきで物腰やわらかく、基本的にやさしい。観光客が少ないメクネスでは、こちらから尋ねなくても親切に道を教えてくれる人が多い。
メクネスで話される言葉はフランス語になった。しかし、ある男が珍しく英語で話しかけ、複雑なメディナ内のポイントをガイドしてくれた。最後に予想通り土産物店に連れていかれるが店主の講釈だけを聞いて店を出る。すると、その男がガイド代として2ユーロ弱を要求してきた。私にとって彼のガイドがかなり役に立ち、あまりにも控えめな数字だったため一瞬心が動いた。しかし、軽く拒否して様子を見ていたら簡単に引き下がってしまった。噂で聞いていたインド人以上に押しの強いモロッコ人にはまだ出会っていない。
モロッコに入ってから、ヨーロッパでほとんどできなかった子どもたちとコミュニケーションできるようになったが、彼らの写真を撮るのはなかなか難しい。撮られたがっている子どもたちは多いが、近くにいる親や大人たちが許さない。親の承諾を受けてなんとか撮影していると、興奮して騒ぎ出す子どもたちを近くにいる大人が叱りつける。間接的に撮影者の私を注意しているようで、何度も怒られているうちに子どもを写す意欲が薄れてしまった。
メクネスの食堂でもタジンを注文した。今度はずいぶんと店の雰囲気が異なる。昼時だが客が少なく、店内には簡素な机と椅子がつまらなそうに並べられる。時間がかかるはずの土鍋料理があっという間に出てきた。鶏肉とポテトチップスだけだ。これはフェズのタジンと全然違う。野菜がないぞ。油が多すぎる。食べ始めてすぐ気持ち悪くなってきた。
[モロッコ]カサブランカ
<ハッサン2世モスク(航空写真)>
<ハッサン2世モスクを望むメディナ>
昨晩は、メクネスでのホテル周辺がやたらとうるさかった。カフェテラスや路上で騒いでいるようなのだが、3時半の夜明け前のアザーンが流れてもまだ静まらなかった。酒も飲まずによく騒いでいられるものだ。騒音で寝られなかったせいか夜中に何度もトイレに行き、今日もお腹に力が入らない。
ヨーロッパで2ヶ月にわたるパンのみの食事に馴染んだ腹は、モロッコに入ってからの雑菌まじりのサラダや油の多い食べ物にまいったようだ。そのうち慣れると思うが、そのころはモロッコ観光が終わってしまうだろう。
カサブランカはただの大都市だった。
事前学習がなくツーリストオフィスが休みで情報不足だが、映画であまりにも有名なカサブランカをイメージする場所はない。見どころとしては世界で3番目に大きいハッサン2世モスクがあるだけ。都会のため子供たちと遊ぶ機会も少なく、メディナ内でカメラを向けるとヘジャブを被った女性たちは黙って顔を隠し(申し訳ない)、男たちは口うるさく注意してくる。私にとってまったく面白みのない所だが、こういう街だとわかっただけで良しとする。
港街カサブランカは気性が荒い人が多いのかもしれない。アラビア語圏では、あちこちで口ゲンカ(あるいは口論)が行われているものだが、ここでは掴み合いや殴り合いの喧嘩に何度も出会った。グループ同士の争いにやじ馬根性で近づくと、乱闘に加わっていた飼い犬が興奮して私に向かってきた。すんでの所で噛まれずに逃げることはできたが、よだれと共に(犬か人間のものかわからぬ)血糊をズボンにべっとり付けられてしまった。やはり争い事には近づくべきではない。
駅から乗ったバスで降ろされた場所がわからずおろおろしていた時、親切にもホテルまで案内してくれる男がいた。ニコニコしていたがいかにも怪しいやつだった。そのホテルが今ひとつ気に入らなかったので、決めずに出てくる。現在地がわかったのであとはひとりで探そうとして、礼を言って別れようとすると男の表情が変わった。
「そのホテルに泊まらないのならガイド代1ユーロ払え」
「なぜ払う必要がある?」
「それが私の仕事だからだ」
「でも、案内する前に説明しなかったよね。ありがとう。金は払わないよ」
この程度のことを言っただけで、男は顔を歪め罵言を吐いて立ち去った。
モロッコ人、そんなに淡泊じゃ仕事にならん、インド行って修行して来い。
[モロッコ]マラケシュ
<エルフナ広場(航空写真)の夜の屋台(2枚組)>
今朝も体調が悪く10時過ぎにやっとカサブランカのホテルを出たが、11時発の列車が2時間以上遅れてマラケシュに17時ごろ着く。
バスで旧市街に入り、夕方でも35度近い暑さの中を歩き、エルフナ広場に近いホテルにチェックインする。もうほとんど力尽きていたが、朝、ホテルの部屋でパンをかじったきり何も口にしていないので探索にでかける。
エルフナ広場は人であふれかえる。屋台でジュースや食べ物が売られ、あちこちのスペースでパフォーマンスが行なわれる。パフォーマンスのほとんどはモロッコ人向けで言葉も分からないので面白くない。ヘビは気持ち悪いだけだし、カメラを向けると待ち構えていた集金係がすぐに寄ってくる。撮影代を払うのには抵抗があるので、つまらないものを敢えて撮るのはやめる。
地元の美味そうな食事をとりたいところだが、今日の体調では屋台から漂う臭いだけで気分が悪い。他の街ではよく目にしていたマクドナルドをここマラケシュ旧市街ではみつけられず、外国人向けピザショップで凌ぐことにした。
体の節々が痛み、長時間睡眠を取っても瞼が重い。カイロで停滞した時と同じような症状になってきた。
エアコンの効いた部屋で昏々と眠る。
アリガト、アタマ、アキハバラ。
エルフナ広場で羊のアタマをカウンターに並べて食事を供する屋台がある。そこを通った時、呼び込みのオヤジに声かけられ、おもわず吹き出してしまった。誰かに教えられた見事なフレーズだと思ったが、たまたま出てきた言葉のようだ。少し経ってから、再びその前を通った時はテンポ悪くこう言っていたから。
アリガト、シナガワ、ア、アタマ。
それじゃ全然面白くないんだよな。
つまらないと思っていたエルフナ広場だが、時々、聞き惚れる音楽が流れてきたり、変わったゲームをしているのをみつけて足を止める。日本の民謡のような歌声が聞こえていても必ず途中からアップテンポの打楽器が加わり、子供たちが体をくねらせるアフリカっぽい音楽に変わってくる。上手なグループもいるが、ほとんどはただの素人が騒音を出しているだけだ。
ゲームではコーラ釣りに目を引かれた。ガラスの2L瓶を地面に並べ、釣り糸から垂れる輪を瓶の注ぎ口に通せば、それを持ち帰れるのだが簡単にはいかないようだ。暗くならないと始めないゲームで、真っ暗になると10人以上が円陣を組み釣り糸を垂れる姿が面白かった。が、ただそれだけだ。
マラケシュには安くて栄養のありそうな食べ物が多い。屋台で素材を店頭に並べ目の前で調理するので、体調が良ければさぞかし美味しそうにみえたことだろう。
カフェバーで飲み物しか目に入らない東欧や、安い食べ物はパンとピザしかない西欧を歩きながら、豊富な食材に溢れ美味い物を腹一杯食べられる街を夢見ていた。そんな街にやっとたどり着いたというのに、愚かな私の胃腸は滋養溢れる食物を受け入れない。今日も慣れ親しんだパンとピザのみを食べることになった。
<バラとクトゥビアのミナレット>
モロッコの撮影でこんなに苦しむとは思わなかった。
観光客があまり訪れないエリアで趣のある場所をみつけ、カメラを構えると地元の人たちに制止される。
広場で撮影を求めてくるパフォーマーは金を払ってまで撮りたくない。(机上いっぱいに抜歯した歯を並べる路上歯医者も撮影用のパフォーマーだった)
魅力的な子どもはいくらでもいるが、親や周囲の大人たちにガードされている。
そして建築物はどこもパッとせず。特徴のない建物とどこも同じでないかと思えるミナレット(モスクの塔)ばかり。
マラケシュのシンボルとも言えるクトゥビアのミナレットを撮ろうとしたが、塔だけでは何の面白味もない。せめて青空をバックにできれば映えるのだが今日は霞んでいる。
モスクの南側にモロッコでは珍しく緑溢れる公園があった。緑が多いのはマラケシュの特徴かもしれない。公園内で枯れかけた赤いバラをみつけたので添えてみる。(写真)
ミナレットの周囲を歩き回り何枚撮影したことだろう。もうモロッコを撮る気力はない。
モロッコは砂漠地帯を訪れないと魅力的な被写体に出会えないのかもしれない。マラケシュから砂漠への入り口となるワルザザートへ向かう予定だったが、腹を壊しバスに乗れるような体調でなかったため断念。明日は飛行機でパリへ飛ぶ。
[フランス]トゥール
<シャンボール城(航空写真)>
今日はモンサンミッシェル近くの街ポルトソンに宿泊するつもりだったが、予定していた列車が曜日運行で走っていないことが昨晩分かった。よく見ると平日は1日2本しか走っていない。フランスの列車は北部でも本数が少ない。今さらパリの宿を取ることは困難が予想される。考えた末、当初予定していたロワール古城めぐりをすることにしてトゥールに向かう。
トゥールから更に列車とバスを乗り継いで、この辺りで最も有名なシャンボール城を訪ねた。
最初は奇抜な外観に興奮したが、見慣れてくると雑然とした稚拙なデザインに思えてきた。
しかし、狩猟の拠点として使われたというこの城の周辺にはのどかな自然が広がっている。一帯には何十もの古城があるというから、ヨーロッパ旅行者のようにキャンプカーや自転車で巡るのは楽しそうだ。
マラケシュからパリへの空路移動。やっと胃腸が通常の不調状態まで戻った。あとは普通に食べながら治していく。機内食で久々のサラダと肉料理。ワインをグラスに注ぎ、食べようとするとパンがない。以前は余程空腹でない限り、機内食でパンに手をつけることがなかったが、今はパンがないと寂しい。フライトアテンダントに催促すると、前の席から順番に配っているため少し待つよう促される。早く持って来てくれ、パンなしで肉が食えるか、ワインが飲めるか。すっかりパン好きになってしまった。
パリも暑い。荷物を持って街を歩いている時の暑さはモロッコと変わらない。それなのにホテルにはエアコンがなく、扇風機すらないというのは今日の暑さが特別ということか。モロッコやスペインでもエアコン、扇風機なしの部屋に泊まったが、夜になればかなり冷えた。しかし、この部屋は窓を開けていても涼しい風が全く入ってこない。更にワールドカップの試合でフランスが勝ったものだから、住宅地であるこの周辺も大騒ぎだ。(騒ぎは3時ぐらいに収まったが、寝苦しい暑さは朝まで続いた)
パリのホテルはヨーロッパ内で最も高く空き部屋をみつけにくいということなので、ニースで無料ネット利用が可能だった時に2時間ぐらいかけて最安値の部屋をみつけた。このKyriad HOTELはフランス国内に200の拠点を持つまともなホテルのようだがシンクが異常に小さい。私の両手のひらが収まらないのだ。日課である洗濯に大変苦労した。
[フランス]モンサンミッシェル
<モンサンミッシェル遠景/内部(2枚組)>
トゥールからルマンを経由してレンヌへそこからバスで1時間強でモンサンミッシェルに着く。昨日に続き雨。激しく降ることはないが、カメラもレンズも濡れる雨が降っている。
更に重い荷物を抱えたまま、参道を登り城内を観光せざるを得なかった。大変な失敗だ。
ヨーロッパでは特急の停まる駅にはコインロッカーや荷物一時預かりがあり、何度か利用していた。フランスの駅も同様にあると思っていたが、大きな駅であるレンヌでは荷物を預かるサービスは行っていなかった。(そういえばフランスの駅では手荷物預り所を見ていない)
しかしながら大きな観光施設にはクロークがあるものだと思っていたが、それは博物館や美術館の場合で、モンサンミッシェルにはクロークがなかった。時々、傘を差してカメラを持ち、肩から体が傾くほど重いバッグをぶら下げる。なかなか辛い。
パリから日帰りするか、近くの街にホテルを取って荷物を置く必要があったのだ。
モンサンミッシェルは、ここにしかない景観をみせてくれるという点では価値があるが、さんざん写真や映像で見ているため新たな感動は生まれにくい。有名な観光地だから見に来て満足というのが、おおかたの観光客の感想ではないだろうか。
今回のヨーロッパ旅行で可能な限り有料トイレを避けてきたが、今日はまだ腹が不調だったため2回も利用してしまった。ヨーロッパのトイレを有料にしているのは浮浪者対策が大きいと考えていたが、モンサンミッシェル内のトイレが有料というのはどういうことだろう。島内にはトイレが少ないからできるだけ我慢してねという風にしか理解できない。
ヨーロッパで多くみられる公共スペースでのキスには全く慣れないどころか不快極まりない。なぜ私の目の前でするのだ。なぜ音を立ててキスする必要がある。
レンヌからパリへ戻る列車で対面に座るカップルが頻繁にキスをしていた。ニコチンかカフェインのような何らかの成分が切れお互いがキスを求めているようだが、それが15分も持たない。フランスは周辺国と違って、車内で携帯電話の利用が禁止されているようだが、ほとんど守られていない。たとえ車内でキスを禁止しても守られないんだろうな。
「えー車内のお客さまー、周りのお客様のご迷惑になりますので、キスはデッキで、えーキッスはデッキでお済ませ下さいますようお願いします」
[フランス]ベルサイユ
フランスが誇る観光地であり、フランス国内で最初に世界文化遺産に指定されたというベルサイユ宮殿は期待していた。ヨーロッパで1番か2番目に良かったウィーンのシェーンブルン宮殿より知名度からいっても勝っているのは間違いないだろうと思っていた。それゆえハイシーズン週末料金で25ユーロという超高額パスを1時間並んで購入したのだが。
うーん、宮殿内は最低このぐらいないと許さないぞと考えていたギリギリのレベル。他の国でさんざん似たような施設を見てきた後だけにほとんど感動がない。ご自慢の庭園はさすがに広い。いや、広すぎる。歩いて見る大きさではない。しかし、パスを買ってしまっているのでひととおりポイントを回りたいし、有料乗り物に更に金を出すなんてとんでもないことだし、と歩き回っているとあっという間に1日は終わってしまった。
植物園かと思えるほどよく手入れされた木々や花々が生い茂り、エリア毎に変化のある良い公園だと思うが、これを十分の一に凝縮してもらわないと、日本人としては公園を鑑賞した気分になれない。
私は歩くのが好きで比較的得意だと思っていたが、公園のあまりの広さに膝や腰に痛みを感じてベンチで休む。大勢の家族連れが談笑しながら目の前を通り過ぎていく。本当に良く歩く人たちだ。恐れ入りましたヨーロッパ人。
ベルサイユ宮殿でチケット購入のため列に並んでいる時、私のすぐ前に2組の若いカップルがいた。そう、若かったのでアレが切れるのが早い。そして、2組のカップルというのはお互い刺激しあう。もう5分も間をあけずににチュッチュッ、チュッチュッとキスの応酬。至近距離で見せられるこちらにとって、それは目の前で鼻をかんだり淡をはかれるよりも不快だ。ヨーロッパではこんな下品な行為が許されるのだろうか。彼らのあまりのひどさによほど注意してやろうかと思ったが、ここは敵地。キスに対するこちらの人々の認識を私は理解していない。ここで私が声を荒らげて注意することは、もしかすると、「音を出してソバをすするな」と東京の蕎麦屋で外国人が怒鳴るのに等しいのかもしれない。せめて嫌煙権ならぬ嫌キス権を行使させてもらいたい。嫌キス権のバッチを胸に付け、下品なカップルに対しては黙ってそのバッチを突きだしてみせる。それが認知されてくると実は東洋人だけでなくヨーロッパ人の多くもその嫌キス権のバッチを胸に付けているかもしれない。
パリのホテルはネット上で最安値のKyriad HOTEL。安くて清潔な良い部屋だと思っていたが、このホテルにはエアコンがない以外にも問題があった。向かい側がミュージックバーで、スペイン民族音楽が休みなく続く。長時間の西日であたたまった部屋を冷やそうと窓を全開にしているからたまらない。周辺が住宅地なのに、これだけの大音響垂れ流し状態に苦情がないのが理解できない。
車内での携帯電話やヘッドホンステレオの騒音に嫌な顔すらみせないことからも、フランス人は音に対してかなり寛容なのだろうか。
[フランス]パリ
<ノートルダム大聖堂>
最終日、ルーブル美術館にはまってしまった。1回で全部見られるものではないと聞いていたので有名どころだけポイントを押さえて見るつもりだった。
ミロのビーナスやモナリザの微笑み周辺は大変な熱気で蒸し暑い。ぐったり疲れて、人気のない展示コーナーで椅子に座り涼む。各ポイントにはそこの解説が書かれたA3サイズの板を手に取り読むことができる。各国の言語が用意されているので日本語版をじっくり読む。すると、そのコーナーに興味がわき、展示物を鑑賞する。そして、また人の多いコーナーに繰り出す。そんなことをしているうちに広大な館内のほとんどのエリアを訪れてしまった。
このルーブル美術館(日本語では博物館の方が良い気がするのだが)は非常に鑑賞しやすい。各国の言語で用意された案内図は大変わかりやすく、館内の誘導表示や地図もその案内図に沿っているため、複雑な建物内もほとんど迷うことなく歩き回れる。そして、展示物は世界の博物館、美術館のお手本となるような見やすい配置となっている。相当のお宝ばかりだと思うのだが、ほとんどの展示物は見学者が手で触ってしまえるほど無防備に陳列している。個人的には不要だと思うのだがカメラ撮影が可能なコーナーが多く、流量制限もなく自由に見て回れる。ヨーロッパで今まで見てきた博物館とはかなり異なる気がする。フランス人の寛容さによるものが大きいのだろうか、ヨーロッパでもやればできるじゃない。
ルーブル美術館で時間を取られ、パリの観光時間が残り少なくなってきた。あわててシテ島周辺を歩き回る。
いいんじゃない。歩道が広く清潔で歩きやすい。イメージしていたヨーロッパ大都市の景観が目に入る。のんびりと探索したいが時間がない。写真を撮っている暇もない。
ヨーロッパ観光はパリを抜きには語れない。やっとヨーロッパを旅している気分になった時、3ヶ月の旅の終わりを迎えた。
[日本]東京
イスラエル航空とエジプト航空のオフィスを訪問する必要があったので、東京で宿泊する。ネットで調べておいた上野駅から15分の入谷ステーションホテルへ。部屋は空きがあり通常料金で4,900円。33ユーロ相当だからヨーロッパの大都市であれば、トイレシャワーなしの部屋でみつかるかどうかの価格だ。もちろんこちらはトイレ風呂付きでネット使い放題。日本では決してきれいなホテルとは言えないレベルだが、帰国直後のためおそろしく清潔な部屋に感じる。少なくともホテルと食べ物に関して、日本はヨーロッパより間違いなく安い。
上野駅周辺を歩いていると街の汚さを感じる。歩道に障害物が多く歩きにくい。そして自転車が高速で蛇行しながら歩行者の間を抜けていく。なぜ自転車が歩道を走っているんだ。歩道を通るなら速度を落として走れ。これなら自転車通行帯があるアムステルダムの方がまだましだ。
人々の顔を見てドキッとした。特徴のない無表情の顔が視線を落として次々にすれ違っていく。笑顔がない、華やかさがない、不気味だ。お前らいったいどこの国の人間だ。そう叫びたくなった。
東京はやはり暑い。パリよりもスペインよりも暑いかもしれない。日差しが弱いのになぜこんなに暑いのだ。蒸し暑く不快だ。空調が十分利いていない地下道を歩くと両脇からスチームが吹き出しているのではないかという程の蒸し暑さだ。今回の旅の中で、東京のこの不快さに匹敵するのは45度近くあったルクソールぐらいではないだろうか。それなのにサラリーマンたちはネクタイにスーツ姿で汗を押さえつけている。屋内では強力なクーラーで体を冷やし、サウナのような外に出て我慢比べするのは、完全に時代遅れだと思うのだが。
欧州たび日記のまとめ
他人にお勧めする場合の評価は観光地ランクに載せましたが、個人的な好みのみによる今回の旅のベスト3は以下のようになります。
好きな街
嫌いな街
印象深い旅
- ブルガリア、マケドニア、コソボ一帯の緑溢れる山あいを走る列車の旅
- ドブロブニクからコトル、ブドゥバを通りバルまで至る複雑な海岸線を走るバスの旅
- 気持ちの良いブレッドでの滞在を始めとして、何もないがなぜか楽しいスロベニアの旅
旅の予算は移動費(マイル交換で得た、東京-パリ-チュニス、マラケシュ-パリ-東京の航空運賃除く)を含めて全体平均で1日1万円でしたが、自分の計算上は強引に収めました。(ユーロの為替レートが途中からあがって1ユーロが150円ぐらいまで上がっているので実際は微妙)
バックパッカーや長期旅行者からみると非常に高い予算ですが、ドミトリーに泊まらずに毎日のように移動するとヨーロッパを1日1万円(70ユーロ)というのは非常にタフ。感覚的平均予算は以下の通り。(チュニス-テルアビブ、テルアビブ-イスタンブルの航空運賃は平均1日1万円に含まれるが下記移動費には含めていない)
- [単位:ユーロ]
- 西欧
- 東欧
- 北アフリカ
- 宿泊費
- 40
- 25
- 20
- 移動費
- 15
- 10
- 5
- 各種入場料
- 15
- 10
- 5
- 食費
- 10
- 10
- 10