[カンボジア]アンロンベン(Anlongveng)

<プレア・ビヒアへの道中の農村/アンロンベン町中の沼航空写真)(2枚組)

アンロンベン(アーロンウェン)からプレア・ビヒア(プリア・ヴィヘア、プレアヴィヒア)までの120km(後日確認したGoogleマップのルート計算では90~110km)をバイクタクシーで走る。とんでもない悪路だった。
道が乾いた区間はモトクロスコースのように大きくうねり、泥濘地帯では深い轍が道全体にできている。これ以上進めそうもない2台のトラック(右写真)を最後に車には出会わなかった。

それでも、道沿いには点々と集落が続き、周辺には美しい自然が広がっていた。

≫続きを表示

そもそもこのルートを通ろうと思ったきっかけは、シエムリアプの観光局でプレアビヒアからタイに抜けられるという情報を得たことだった。また、昨晩入ったレストランでプレアビヒア(プリアヴィヘア)行きのバスがアンロンベンから7時に出るという話を聞いていたため、本日タイに抜けるべく、気合十分で朝6時半にザックを背負い宿を出た。
アーロンウェンはホテルのスタッフも含め英語を話す人が少ない。確かな情報を得るために町中をかなり歩き回ったが、バスも乗り合いトラックも走っていないということがわかる。車のチャーターは金がかかりそうなので、バイクタクシーをチャーターすることにした。

バスでも行ける道という思い込みから120km走破に2時間程度と予想していたが、この悪路はバスどころか四駆車でも途中までしか入れず、ブレアビヒア近くで反対側の道と合流する地点(たぶんSra’aem)まで車は走っていなかった。走っていたのはバイクと自転車と乗り合いトラクター。その道をバイクの後部座席でザックを抱えながらの移動は大変。バイク後席の座り方を心得てなく、サスペンションがほとんど利いていなかったせいもあるが、悪路による振動が尻から腰、そして脳天まで響く。
この苦しみはいつになったら止むのだろうかと思いながらもただ耐えているしかない。もう少しあと少しと言い聞かせ乗車していたのは5時間。プレアビヒア間近でタイヤがパンクして炎天下で1時間待たされるというオマケを含め6時間要した。

<プレア・ヴィヒア寺院/お嬢さん(2枚組)

プレア・ヴィヘアの町で高性能のバイクに乗り換え登山道のような道を登っていくと、タイ国境近くにあるクメール遺跡に到達する。遺跡はイマイチ盛り上がりに欠けていたが、高台にある寺院の断崖からカンボジア平原のプリミティブな農村地帯を望むことができた。一方、タイ側に目を向けると緑の中に美しい舗装道路が延び、カンボジアとは全く別の世界がある。尻の痛みが消えぬ私には天国に続く道のように感じ、もう悪路に苦しむことはないと思っていた。

意気揚々とブレア・ビヒア丘の長い階段を下っていったのだが、カンボジアのイミグレーションで止められてしまう。プレアビヒアは第3国の人間が通過できる国境ではないと言うのだ。ガイドブックに越境可能ポイントとして載っていなかったので多少不安はあったのだが、行けば何とかなると思っていた。無理だと思えることでも、海外では熱意を持って訴えればなんとかなるものだ。
観光局で通れると言われたから来たのだとゴリ押ししようとしたが、制服姿の男たちは首を横に振るだけだった。辛かった5時間の移動を訴え哀願していると、意外なほど紳士的なカンボジア係官がタイのイミグレーションに電話をしてくれる。私に受話器を渡し、タイの係官に直接訴えさせてくれた。しかし、ダメなものは駄目なのだ。そして、ここから一番近いタイとの国境ポイントに行くためにはアーロンウェンに戻るしかないと告げられ、目の前が真っ暗になる。

もう体が限界のような気がしたが、再びバイクをチャーターして悪路を戻ることにした。サスペンションの利きが良さそうなバイクを選んだため、少しは楽になったような気がしていた。
しかし、走り出して間もなく陽が沈む。道に街灯などあるわけなく、集落の家々にも電気が通っていないため、ほとんど灯りがともっていない。暗闇のモトクロスコースを2人乗りで走っているようなものだから、少し速度を上げるとすぐに予期せぬ大穴に車輪を落とし、後席の私は重い荷物を抱えたままジャンプする。
ついには、ぬかるみに車輪を取られバイクが横転。ドライバーは足をついて逃げるが、私は荷物を抱えたままバイクの下敷きに。まあ、ぬかるみだから、痛みはそれほどなかったが、衣服や鞄が泥まみれ。

結局、帰りも全く休憩を取らずに5時間、悪路を走り続けた。今回の往復の移動は、私の経験上、最も苦しみに満ちたものだった。

5 Responses to [カンボジア]アンロンベン(Anlongveng)

  1. 樫尾福子 のコメント:

    バイクでの往復10時間大変でしたね。「タイとカンボジアで交戦」というニュース知って、どの辺にあるのか、どうやって行くことができるのか、と見ていました。

    • yawakaze(サイト作者) のコメント:

      「プレアビヒア」の検索で訪れる方が多いので、プレアビヒア寺院で撮影した写真を2枚追加して、プレアビヒア寺院の位置をGoogleマップ上にポイントしました。+ボタンで15ぐらいまで拡大すると点線の国境と共に地図上にPreah Vihear Templeが表示されます。

  2. カワバタセイヤ のコメント:

    2019年12月に私はタイ人のパートナーとカンボジアのアンコールワットを見に行く為にタイからポイペトの国境を抜けてカンボジアに入国しました。
    シェムリアップからの帰り道は再び6号線をチャャーターした車でカンボジアのサムラオンからタイ国境オスマックへ抜けてスリン、ブリラムへ行きました。
    この紀行を読ませて頂き、その時の旅を思い出しました。
    素晴らしいブログでした。

    今、カンボジアのポルポト政権時代の本を読みながら歴史を遡っています。

    • yawakaze のコメント:

      数年も止まったままのサイトにコメントいただきありがとうございます。
      私も久しぶりに自分のサイトを見ました。サイトを閉鎖せずに残しておいて良かったです。

  3. カワバタ セイヤ のコメント:

    yawakazeさま 返信ありがとうございました。
    この紀行ブログは、これから旅をする人達にとって、とても素晴らしい旅の記録だと思います。ぜひ今後も閉鎖せずに残してください。

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください