[ナイジェリア]カノ

kano

<ナッツ売りのショウジョ/路地のお子さん>

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<カノ旧市街でコーランを勉強中の子供たち>

ナイジェリアはギブアップ。街中が白煙にけむる排ガスに目鼻と喉が耐えられない。
そして電気が止まる。博物館に入っても暗くて屋内展示物が私の目にはほとんど見えない。博物館スタッフは、少なくとも日中はほぼ1年中電気が供給されないと言っていた。(それなら自家発電しろよ)

そして、夜になっても電気が止まっているからホテル(今日のホテルは自家発電あり)の近くの店に買い物に行くのにも危ないってもんじゃない。道には歩行用のスペースがなくバイクや車をよけ、深い下水溝を何度もまたがなければならない。歩くだけでも大変でスキだらけなのだが、私からは何も見えない暗闇から何度も嘲笑を伴った声がかけられる。いつ襲われても不思議でない。

こんな状態で暴動も起こさず暮らしているナイジェリア人の忍耐力たるや相当なものだ。
=>(後日談)私が出国した1週間後にカノ - イバダン間にある街ジョス(Jos)で数百人の死者が出る暴動発生。苦難な生活を強いられている人々は、何かきっかけがあると不満が噴出して暴動となる傾向がある。

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昨日、オソボから16時間かけて移動して、カノのターミナル到着が夜中の0時半になってしまった。かなりふっかけてくるバイクタクシーの料金を値切っているうちに選択の余地がなくなり、面構えの悪い男の車に乗ることになった。(運転手を選ぶ際に面構えの善し悪しは非常に重要)

街の中心部に入ってくると車も人もほとんど通っていなかったが、暗闇で懐中電灯を上下に小刻みに揺らしバイクを止める検問が大きな交差点毎にあった。
3つの検問を無事通過して、ホテルがすぐ近くの4つ目の検問で、警官が明らかに賄賂を要求するしぐさをしながら英語か現地語を発した。何を言っているかわからんと伝えると、彼ら5人ぐらいのリーダー格の警官が出てくる。その警官は手荷物検査と称して暗闇の中、バイクのシートの上でバッグを開けさせる。この嫌がらせに耐えれば通過できるかと思ったが、検査後その男はわかりにくい英語で話しかけてくる。理解できた内容は次のようなことだった。
「私たちはこんな夜中に検問をしてあなたたちの安全を守っている。あなたに家族がいるだろうが私にも家族がいる。あなたと私は一つだ」
賄賂を要求しているとしか考えられないが、筋が通っていないのでso what?なのだ。

私が「じゃあ夜遅いのでホテルに行くよ」と言うと酒臭い息をはく男はまた同じ話を始める。彼の話が終わる度に「あんたの言っていることは意味がわからん」と言うことを5回ぐらい繰り返しやっと通過できる。脅迫されてはいないが、深夜に30分近く足止めさせるという性質の悪い警官である。

この手のアフリカ役人は賄賂で稼いで豪勢な生活をしているかというとそういう訳でもなくて、役人だというだけで近親者からたかられるため、その分を賄賂で賄い続けるのが大変なのだという。

この酔っ払い警官の場合、もっとかわいらしく金を要求していれば、「君、そんなにお金欲しいの?あんまりあげるとまた酒飲んじゃうから百円でいいかな。5人で仲良く分けてね」と早めにあしらっておいた方が結果的良かったようだ。しかし、明確に要求されていないのにこちらから金を差し出すなど旅人のはしくれとしてできる訳がない。

警官とやりあっている間、バイクタクの運ちゃんはじっと動かずに待っていて、私が解放されるとホテルに連れて行き、閉じられた門の外から何度も怒鳴りつけスタッフを起こしてくれた。
なかなかいい運ちゃんで助かったと思い、40円のチップを上乗せした200円を差し出すと、彼はみてくれ通りの男に豹変した。
「そんな額受け取れるか。今、1時半だぞ。こんな深夜に検問でどれだけ待たされたと思っているんだ。千円だせ」
深夜のホテル内に響き渡る声で要求してきた。

私は16時間の移動で疲労困憊していたが最後の力を振り絞り、キレてみせる。
「何言ってるんだ、乗る時に決めた額は160円だぞ、そんなこと言うならそれ以上は払わん。だいたい検問で足止めさせたのは警官だ。みんなあんたの国の警官だからな。外国人の私は被害者なんだぞ。あんたが足止めされた分の金を取りたいのならな、あの酔っ払い警官に要求しろ」
そう言って160円を差し出すと、彼は苦虫を噛み潰したような顔をしながらすごすごと腕を伸ばし、金を受け取るとそのまま立ち去った。
激昂した彼の形相からてこずるかと思っていたが、悪人面のナイジェリア人も話せばわかるではないか。(英語が通じるのが大きい。まあ、このドライバーは悪い人ではなかったのだろう)

役人の賄賂体質は国民ひとりひとりが努力して変えていかねばならんのだよ、と説教をたれたかったが、そこまで英語が続かなかった。

<たびメモ>

オソボからアブジャ、カドゥナ経由でカノまで行く(たぶんこんな感じのルート:+で1つ拡大)乗り合いワゴンのターミナルを町歩き時にたまたま発見。2,800Naira。朝8時にHotel Terminus International前を発車。相当うまくいって14時間か。私の場合、30分遅れで出発、乗客が減ったため途中で乗り換えさせられ16時間かかって、カノに深夜0時半着。とてもお勧めできないが、アブジャかカドゥナまでは使えないこともない。

<ナイジェリアめも>
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<バイクタクシーの群れから白煙が上がる>

  • オソボからカノまでの間、12時間以上同じミニバスに乗っていて食事休憩が1回だけ。トイレは途中で客の荷物を積んでいる間にその停車している付近で済ませるしかない。ほとんど『どこでもトイレ』になり得る。
  • ナイジェリアで2番目に大きいという大都会カノのホテル近くでレストランを探している時、入ろうとした店のオープンテラス入り口で立ちションしている男がいた。この店はやめようと立ち去ろうとすると、その男が声をかけてきてその店の主人だということがわかる。都会だろうと食堂の敷地内だろうと『どこでもトイレ』なのだ。
  • ガーナからずっとだが、相変わらず男は坊主頭ばかり。ベナンとの国境からの乗り合いタクシーにパンチパーマ程度の髪がある黒人が同乗していたが、その男はニジェール人で、検問で警官に目をつけられ彼だけパスポートを調べられることが何度かあった。かわいそうなことに調べられる度に賄賂を要求され、挙句の果てにはお前のせいで何度も車を止められたとタクシードライバーから追加料金をしつこく要求されていた。隣国の訪問者を食いものにするとは何たる極悪人ども。
  • これもガーナからずっと、たばこ吸う人が皆無。
  • こちらの人たちは、「おいっ!」と呼びかける代わりに「プスッ!」と唇をはじいて息を飛ばすことにより、他人の注意を引き付ける。車の騒音でうるさい場合には、喉を震わせ大声を出すよりもプスッの方が伝わり易いようだ。ガーナからずっと気になっていたが、ベナンで耳にする頻度が上がり、ナイジェリアに来てここがプスッの本場(帰国後ネットで調べるとイタリアなどヨーロッパでもプスッが聞かれるとのことで英語でpsstのよう)なのではと感じている。このプスッは外国人の気を引くのにも使われるため、道を歩いているとあちこちからプスップスッという音が鼓膜を攻撃する。声と違ってこの音は点で相手にぶつけられるのだ。何台ものバイクタクシーが連なり低速で走っている時、道端から空気銃が発射されたようにプスッという弾が飛んできて私の近くで破裂した。呼びかけられたのは私じゃないと気づいたのだが、私の前を走っていたバイクタクの客が振り向き、プスッを発した友人に手を挙げていた。使い慣れている人たちにとって、このプスッは大声を出すよりもはるかに有効なのである。
  • ナイジェリア人は決して悪い人やおかしな人ばかりではない。他の西アフリカ諸国同様、親切でやさしい人が大勢いる。西アフリカの中では先進国のせいかどうかわからないが、感覚が日本人に近いと感じる人が他の国と比べて多い。しかし、写真を撮ろうとすると、喜ぶ人、気にしない人、嫌がる人、カメラを向けていないのに怒り出す人など反応が様々で、それが全く読めないというのが非常につらい。
  • 写真に関しては子供たちですら、逃げるもの、怒るもの、喜ぶものと反応がまちまちで疲れてしまう。親に連れられた5歳ぐらいの幼児はカメラを向けると泣き出してしまったが、どうやらこの子はカメラが怖いのではなく黄色人種の私が怖くて泣いているようだった。黒人以外見かけぬ下町の路地をうろついていた私は、日本の農村に現れたボビーのような存在だったのだろうか。
  • ナイジェリアでは、ボビー・オロゴンのように低音で喉の奥を膨らませながらゆっくりと話す人を何人も見かけた。男だけでなく女性のボビーもいた。ナイジェリアには、外見だけでなく話し方までボビー似の人たちで溢れている。
  • ナイジェリアの都心は排ガスが常にもうもうと上がり昼は街が白濁している(上の写真)。バイクタクシーや乗り合いミニバスで街中を移動する際、防塵マスクを付けていないと肺や喉がやられる。現地人は交通整理の警官も含めて、マスクの類をしている人をみかけなかった。バイクタクで信号待ちしている時、背の低い子供が私に物乞いしてきた。前方に停車していたバイクから排出される白煙が、その子の顔にまともに噴きかかっていたが、彼は排ガスを全く気にすることなく話し続けていた。ナイジェリア人は生まれた時からこの排ガスを吸わされ、丈夫な人たちだけが成長しているのだから、外国人が現地人に倣ってマスクをしないでいたら身が持たない。何らかの対策が必要。
  • イバダンとカノで電気のない夜の街を歩き回った。車のライト以外は屋台のろうそくぐらいしか灯りがないのだが、大勢の人々が出歩いている。懐中電灯を持っている人は非常に少ない。私が懐中電灯を照らしながら歩いていると暗闇の中からいろいろな声がかかる。闇に潜む無数の人々から見つめられているようで恐怖を感じる。
  • ガイドブックで少なくともオソボでは両替不可とあり、銀行もない町かと思ったら、大きな銀行店舗がいくつもあり、Dollars Availableの表示がみられた。更に停電中でも稼動しているATMをほとんどの店で設置していていくつかは看板にVISAの表示があったのでVISA出金可能と思われる。他の都市でも銀行店舗はよく目に付き、ATM台数がかなり多い。カノでは店舗外ATMでもVISA出金できたので、少なくともVISAキャッシングを利用する人は両替の心配不要。私は最新2006年版ロンプラの超古い情報(ここ2、3年の間にこれだけのATMが設置されたとはとても思えない)を信用してしまい、いくつも無駄な対策を取ってしまった。
    <参考図書>Lonely Planet West Africa (6th Edition)=>最新版 West Africa (9th Edition)
  • ロンプラ表示の料金と比べて交通機関は6割前後上がっていたが、ホテルはせいぜい1割高くなっている程度。
  • 英語が公用語で、外国人と会話する機会が多い人はまともに話せるようだが、一般の人々の英語はかなりひどい訛りがあるようだ。高校生ぐらいの少年が私に話しかけてくる英語が理解できず、単語を紙に書いてもらったら、想像を超えた発音をしていることがわかり、彼らの英語はヒアリングしないことにした。
  • 2件の宿が満室で深夜のため仕方なく泊まることになったカノのスイートルーム(3,500円)でもシャワーヘッドが飾りモノでホースと繋がってなかったため、バケツの水で体を洗う。
    ≫≫(後日談)これが西アフリカ安宿のスタンダードだと思っていたが、シャワーが必ず壊れているのはナイジェリアとベナンだけだった。どうしてナイジェリアと隣の小国ベナンは何でもかんでも特別にひどいのだろう。(ベナンは小ナイジェリアのよう)
  • 街中の深い排水溝に厚く堆積したゴミを見ていると、この国がまともな状態になることは今の世代にはないような気がしてくる。西アフリカではどの国でも、『どこでもゴミ箱』のように平気でゴミを捨てているが、ナイジェリアは人口密度が高いためにゴミの堆積がどこよりも多い。ゴミを食べさせるためか、街中にやぎが放されているが、とても彼らが食べきれる量ではない。
  • 虚弱な私はナイジェリアでは3日以上生きられない。
    ≫≫この後の日記に記しているが、中耳炎などの症状で3日後に発熱して3週間苦しむことになる。
  • マイナースポットをゆく(西アフリカ編/東アフリカ編)のまとめ

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