<ラホール市街地(2枚組)>
ペシャワールを昼過ぎに発ち、1時間半のフライトでパキスタン第2の都市ラホールに入る。16世紀ムガール帝国の時代から芸術・文化の中心として栄えたラホールには世界遺産のフォート(王城)をはじめとして、庭園、モスク、博物館と見どころが多い。特にラホール博物館にある『断食するシッダールタ』の仏像は、極限までの苦行に打ち勝つブッダを、目が窪みあばらと血管が浮き出る姿で表現しており、私にとって今回最大の目玉である。しかし、翌日のパキスタン最終日が休館日だということを現地で知り、終了15分前に博物館に入ると愛想のないスタッフたちに追い立てられ、ガンダーラ芸術の最高傑作をゆっくり鑑賞することができなかった。
ラホール市街の喧騒は想像を絶するものだった。手押し車、二輪車、馬車、三輪車、バス、トラックと車輪がついた全種類の乗り物を世界中から集め、路上にほおり投げ競わせているようだ。発狂しそうなほどの音の洪水が襲いかかり、空気は白濁して路上の砂塵が舞い上がる。(帰国後談:ラホールやペシャワールの粉塵を吸いすぎ中耳炎にかかり手術まですることになった。耳鼻咽喉や肺など粘膜系が弱い人はマスクやスカーフで顔を覆うなどの防御策を取るべき)
特にラホールで多く見かける馬車が道の真ん中を悠々と通るため、道路はすぐに渋滞してクラクションによる騒音が発生する。人々が望んでこの混沌と喧騒を作り出しているとしか思えないのだ。