国別アーカイブ:マリ ( 13件の日記 、ページ 2/2 )

モプティ

<ニジェール河の夕景(2枚組)

トンブクトゥから10時間かけて戻ってくると、モプティは陽が傾き始めていた。見事な夕焼けに染まるニジェール川で女性たちが洗い物に励む。
昔の日本人は洗濯をする時に腰を深く落とす蹲踞の姿勢を取っていた。ヨーロッパ人は膝を付いて行なっていたという。しかし、アフリカの多くの人々は膝を伸ばしたまま深く前屈するため、水辺で作業しても衣服が濡れずにすむ。

行き交う舟や働く女性たちが、薄紅色の水面の輝きから浮かびあがる。
ああ、この景色を見るためにここまで来たのだ。

黄金の都と謳われたトンブクトゥ

<サンコレ・モスク>

<ジンゲリベリ・モスク>

トンブクトゥはニジェール川大湾曲部のサハラ砂漠に最も突き出た部分に位置する。かつては、サハラ砂漠からラクダを使って運ばれた岩塩が船でニジェール川を遡り金と交換されたという。トンブクトゥは13世紀から16世紀までマリ帝国、ソンガイ帝国の交易都市としてその名をアラブ・ヨーロッパ地域に轟かせていた。現在では砂漠に街が浸食される危機遺産の都市として有名だ。
砂漠の黄金都市トンブクトゥに強い憧れを抱き、相当の金と時間をかけて到達した私は、想像以上にさびれた街に愕然とした。小さなモスクで往時の面影をしのぶしかなかったのだ。

日本から時間的に最も遠いであろう世界文化遺産に辿り着いたという、かすかな満足感だけがあった。

モプティからトンブクトゥへ向かう

<ニジェール河を渡る(1枚目)/青の部族 トアレグ族(2枚目)

熱帯雨林のギニア山地を発するニジェール川は、マリ共和国内でサハラ砂漠に向かって大きく北へ湾曲する。今回訪れた、バマコ、セグー、ジェンネ、モプティ、トンブクトゥの観光地は全てニジェール川沿いの都市であり、順番にサハラ砂漠に近づいている。
直通バスでバマコから12時間要したモプティだが、世界遺産トンブクトゥまではまだ遠い。週一便飛ぶかどうかのフライト、たとえ出ても1日以上かかる乗り合い四駆車、最低3日かかる船といった手段があったが、飛行機の日程が合わなかった私は、四駆車をチャーターするという最も高価な選択をした。(マリ旅のルート
トンブクトゥまでの陸路は、砂漠の縁サヘル地域を通る大半が砂の道。幹線を外れてからは対向車も集落も途絶え、青の部族と言われるトアレグ族を見かけただけだ。乾燥地帯といっても単調な景色が続くのではなく、潅木サバンナ、ステップ、土漠と、周辺は刻々と色合いが変化していく。しかし、激しい揺れと車内を浮遊する大量の砂にじっと耐えている旅行者には、車窓を楽しむ余裕はない。さらに砂の道で時々発生するスタックからの脱出作業は、想像以上の過酷な労働であった。
トンブクトゥに近づきニジェール川に出た。つらい砂の道から抜けた安堵感が湧き出て、神秘的な色の水で満たされた大河に心を奪われる。
藍より深い青、それは砂漠の民トアレグ族の色だった。