イエメンのたび

ジャンビーアダンス(マナハ、ハジャラ)

<朝陽に照らされるマナハの街なみ>

<急峻な山を背にしたマナハの暮色>

マナハは、ハジャラへの拠点として外国人観光客が多く訪れる比較的安全な街だ。しかし、街には他の部族からの攻撃に備えた要塞としての機能があり、街を少しはずれると、異国人を見慣れぬ子供たちが逃げ出して遠くから石を投げてくる。

マナハに1件だけあるホテルには私を含め外国人が6人泊まっていた。20畳程の絨毯敷き広間で夕食後、外国人向けにジャンビーアダンスを披露するというので、期待して部屋からカメラを持ち出した。
しかし、演奏に合わせてリズムを取りながら現れたのは髭をたくわえた3人の男たちだった。手をつないで横になったり輪になったりしながらしきりにステップを踏む。やはり、この国ではダンスでも男性しか出てこないのか。それにしても、男たちが懸命にステップを踏む姿を見て楽しいわけない。全くつまらない。
やがて、曲のテンポがあがり、広間の中を飛び跳ねるようにスキップして、中央に座していた私に男たちの汗がかかる。純白の服を着たじいさんが立ち止まり両手を広げ大きな袖を下に垂らす。あんたはジュディオングか。そして、更にテンションを上げ両手を広げたまま駆け回り、じいさんたちの袖が私の顔にあたる。
今度は、ダンサーたちが観客を一人ずつ立たせて手をつなぎ、自分たちと一緒に飛び跳ねさせる。最後に私にも順番が回る。欧米人たちが楽しそうな顔をして応じた後だけに、国際慣例上、断るわけにいかない。しかし、おやじ、顔が汗でぐしょぐしょだぞ。わあ、べちょべちょした手で握るな。わかった、わかった、はしるよ、はねるよ、わらうよ。はあはあはあ。息があがったところでやっと解放される。
良かった良かった、パチパチ、もういいだろ。えっ、終わりじゃない。タンタンドン、タタンタタン。タンタンドン、タタンタタン。曲のテンポがスローになった。男たちが両手を開いて胸や腰を揺らす。これはっ、テンポの遅いベリーダンスだ。おやじたちがそんな踊りしてどうするんだっ。近寄るなー、胸揺らすなー、汗が飛ぶっ。
後ろに下がった男たちの顔つきが変わった。演奏は続く。まだ何かあるのか。ダンサーたちは腰からジャンビーア(半月刀)を抜き、上にかかげる。ひらひらひら、ひらひらひら、太鼓の音に合わせて振り回す。そりゃあちょっと危ないんじゃないか。おい、もしかして・・・。彼らは刀を振り回したまま近寄ってくる。ひらひらひら、ひらひらひら。やめろ、やめろ、ここは砂かぶり席だから、危ないんだから。おいこらっ、足許ばかり見るな、刀を見ろ、ほら、あたるっ。写真撮っているどころじゃない。テンポが上がり、おやじたちは刀を振り回しながら狭いスペースを駆け回る。ひらひらダダダー、ひらひらダダダー。うわーやめろ、危ないって、やめてくれー。

見せ場に入ったジャンビーアダンスはまだまだ続くのだった。

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